当初は副業的なニュアンスとみられていたYouTuberも、小学生のなりたい職業ランキングに登場するほど稼げる職業といった認識も浸透してきましたね。ではYouTuberは確定申告においてどのような点に注意したらよいのでしょう?
経費に対する考え方や消費税についてはやや特殊ですので特に注意が必要ですね。
確定申告は必要?
まず一番気になるのが確定申告をしなければならないかしなくてもよいかですが、給与所得者で年末調整をしていて、確定申告をしない方については、YouTuberとしての所得が他の給与以外の所得と合わせて20万円以下であれば確定申告をする必要はありません(ただ所得があれば住民税の申告は必要であると認識しておかなくてはなりません)。ここでは、所得とは、収入-経費のことですから、まず収入が20万円以下であれば確定申告をしなくてよいということは確実でしょう。
YouTuberの経費はどこまで認められる?
基本的な考え方は一般的な事業所得と同じですので、ここでは、YouTuberとして迷いが生じそうなものをピックアップして検討してみましょう。
高級車は経費?
例えば、高級な車や時計を買ったなどとユーチューブにアップした場合買った費用は経費になるのでしょうか?車は一般的には、事業用に使っているのであれば、その事業に使っている割合の減価償却費が経費となります。
仮に高級車であってもその考え方は変わりありません。ただ事業用に使っていることが条件ですから、売却した場合には、譲渡所得といって所得区分が異なることとなり、損があっても事業所得との損益通算ができませんし、買って車庫に眠らせておいたのであれば事業用に使っているといえませんので経費にすることができません。また、YouTuberとしての所得が少額であれば実際に使っていたとしても、収入と経費のバランスから不自然ととらえられるでしょう。
高級時計にしても購入して毎日ユーチューブにアップしているならば資産計上もあり得るかもしれませんが、そんなわけにもいかないでしょうね。
例えば、これを視聴者プレゼントなどした場合には、広告宣伝費、友人にプレゼントした場合には交際費などの考え方もあり得ないわけではないでしょうが、視聴者プレゼントの場合には、本当に応募の中から抽選で選んだのか、友人にプレゼントなどの場合には、その友人にプレゼントすることが、事業用の収益につながる可能性があるのかなども検討しておかなければなりません。
家賃は経費?
また、一般的に、個人事業の場合ですと、個人宅の家賃のうち、事業用に使っている割合を経費にするといった考え方がありますが、YouTuberの自宅を公開したからといって全額経費にするというわけにはいきません。
もちろん撮影・編集専用の部屋があれば、その面積の割合等は検討すべきでしょうが、さらに事業の用に供した時間なども同時に検討しなければならないでしょう。
洋服代は経費?
では、洋服代なども検討してみます。
洋服を購入してそのコーディネイトをアップしすぐに売った場合ですが、この収入は、事業所得に付随する収入として事業所得の収入として計上しなければなりませんね。
この洋服を売らずに手元に置いておくのであれば、10万円未満であれば経費となるのでしょうが、YouTuberとしての収入とのバランスも考慮すべきでしょう。
つまり、YouTuberとしての収入があまりないのに、ユーチューブにアップしたからといって経費にして損失を生じていたとしたら、これは本来の目的は洋服を購入することであり、収益を上げるための行為ではないのではないかとの疑義が生じかねないということです。
いくつか事例を挙げてみましたが、事業所得の経費になるかならないかは、収入を上げるために直接要した費用か、また、その事業を継続するために必要な費用かといった観点から検討するとよろしいかと思います。
YouTuberの収入は何所得?
次に、YouTuberとしての収入が、雑所得か事業所得かの問題です。
なぜこの問題が重要かといいますと、事業所得であれば、青色申告を行えば65万円の特別控除(令和2年分からは改正)が取れ、損失が生じた場合には、給与所得等との損益通算ができること、損失を繰り越せることなどがありますが、雑所得であればそれらのメリットが受けられないからです。
YouTuberは一般的には趣味、副業から始められる方がほとんどでしょうし、趣味でやられている方以外で損失を生じることは少ないでしょうからあまり検討する必要はないのかもしれませんが、今後は、コンサル料や機材などを初期投入して、開業年は赤字などという方もいらっしゃるかもしれません。
そういった例外でもない限り、損失の損益通算や繰越控除はあまり検討しなくてよいかもしれませんが、青色申告特別控除は重要です。
事業所得であって、青色申告承認申請書を期限内に提出すればこの青色申告特別控除を適用することができるのですが、提出期限は開業後2月以内とされています。 開業をするということは事業として始めるよといった意味合いでしょうから、事業としての要件を満たしている(満たす予定である)必要があります。
そこで事業の要件ですが、このコラムでは何度も出てきていますが、判例等から検討すると
- 安定した収益が得られる可能性があるかどうか
- 自己の危険と計算において独立して営まれているかどうか
- 営利性・有償性を有し生活の糧となっているかどうか
- 反復継続的に行われているかどうか
- 精神的・肉体的労力の程度
などを総合的に勘案して判断することになります。
つまり、サラリーマンを辞めてYouTuberだけで生活するよという方はもちろんのこと、土日は撮影、編集だ、外注も使ってお金をかけてでも頑張るよ、なんて方が事業所得に該当するものと考えられます。
Google AdSenseと消費税
次に消費税の問題です。
YouTuberの収入は、一般的には、「Google AdSense」でしょうが、事務所に所属していらっしゃる方は事務所からの収入、他に企業案件、グッズ販売などがあるでしょう。
Google AdSenseで収入を得るためには、Googleとの契約が必要ですが、この契約相手はグーグル広告とは異なり「Google Asia Pacific Pte Ltd.」かと思います。(事業譲渡がない限り)
この会社は、シンガポールにありますので、外国法人であり、以前はこの外国法人との取引は、国内の事業者が、外国法人に対して行う広告配信による役務提供であるとされ、消費税上の扱いは、税率0%の輸出免税取引とされていました。
ところが、消費税法の改正により、平成27年10月1日以降は国外取引として消費税の対象とならない取引という扱いになりました。
0%の免税取引と、消費税の課税対象外では実質的には同じじゃないかという感じもしますが、まず、課税事業者の判定には大きな違いがでます。
消費税の課税事業者の判定においては、基準期間の課税売上高が1,000万円超であれば課税事業者となるのですが、輸出免税取引は、この判定の額に算入され、課税対象外取引であればこの判定においても対象外となります。
つまり、改正前は、例えば、収入がAdSenseのみで課税事業者であるYouTuberは、支払った消費税のほとんどの還付を受けることができました。
例えば、それを知らない消費税の申告をしていないYouTuberに税務調査が入ったときに税務署は税金の還付をしなければならないという事態が生じたことになります。
これが改正により、基準期間においてAdSense以外の収入が1,000万円を超えていない限り強制的に課税事業者となることはなくなりました。
ただ、YouTuberでAdSense以外の国内での課税売上があり非課税売上があまりない方は、課税事業者でなくても課税事業者を選択すれば消費税還付の可能性があります。
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