新型コロナウイルスの感染の拡大によって、様々なところに影響が出ていますが、税金に関しますと、申告期限や納付期限の延長が発表になっています。どんな人が特例の対象になるのか、感染しなくても対象になるのか、従来の制度で新型コロナウイルス感染症に関連して活用できるものがあるのかなど解説したいと思います。
申告延長、納付延長について
ご存知の通り、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、令和元年分の確定申告における申告・納付期限について、申告所得税・贈与税は、従来の申告期限である令和2年3月16日から、個人事業者の消費税については、令和2年3月31日から、令和2年4月16日まで延長されました。
またこれに伴い、申告所得税及び個人事業者の消費税の振替納税を利用している方の振替納税日についても、申告所得税は令和2年5月15日、個人事業者の消費税は、令和2年5月19日とされました。
申請書類等も同様に、青色申告承認申請や青色事業専従者給与に関する届出、個人事業の開廃業等届出等の申請期限も延長されています。
新型コロナウイルス感染症に関する特例
また、3月27日政府・与党は、収入が急減した企業などの税金と社会保険料の支払いを1年間猶予する特例制度を創設することを発表しました。
特例が受けられるのは、2月以降に収入が大幅に減少した企業や個人事業主などで、1カ月ほどの期間に収入が一定割合減っていれば猶予を認め、新型コロナとの因果関係の証明など細かい手続きは求めない方針です。
税金や社会保険料の免除や猶予をする制度は以前から存在しますが、猶予で生じる延滞税が免除となるのは、前例のない措置となります。
新型コロナウイルスに関連して納付・申告ができない場合
まず、従来からある制度ですが、今回の新型コロナウイルス感染症に関連して、申告・納付ができない場合、例えば、次のような理由により、申告書や決算書類などの国税の申告・納付の手続きに必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合には個別の期限延長が認められることとなっています。
- ① 税務代理等を行う税理士(事務所の職員を含みます)が感染症に感染したこと
- ② 納税者や法人の役員、経理責任者などが、現在、外国に滞在しており、ビザが発給されない又はそのおそれがあるなど入出国に制限等があること
- ③ 次のような事情により、企業や個人事業者、税理士事務所などにおいて通常の業務体制が維持できていない状況が生じたこと
- 経理担当部署の社員が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実がある場合など、その部署を相当の期間、閉鎖しなければならなくなったこと
- 学校の臨時休業の影響や、感染拡大防止のため企業が休暇取得の勧奨を行ったことで、経理担当部署の社員の多くが休暇を取得していること
- ④ 納税者や経理担当の(青色)事業専従者が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実があること
- ⑤ 次のような事情により、納税者が、保健所・医療機関等から外出自粛の要請を受けたこと
- 感染症の患者に濃厚接触した疑いがある
- 発熱の症状があるなど、感染症に感染した疑いがある
- 基礎疾患があるなど、感染症に感染すると重症化するおそれがある
新型コロナウイルスに関連して売上が減少した場合
また、新型コロナウイルス感染症に関連して、売上が減少したことで資金繰りが悪化しており、期限までの国税の納付が困難な場合は、税務署に申請をすることにより、最大で1年間の分割納付が認められ、延滞税も免除される見込みです。
具体的には次のような場合です。
- ① 新型コロナウイルス感染症に関連して財産に相当な損失が生じた場合
- ② ご本人又はご家族がコロナウイルス感染症にかかった場合
- ③ 事業を廃止し、又は休止した場合
- ④ 事業に著しい損失を受けた場合
納付の猶予制度が適用になった場合はどうなる?
なお、納付の猶予制度の適用を受けた国税は、その猶予期間内において分割して納付することとなります。
分割する金額は、納税者の財産の状況等を踏まえて定められます。
納付の猶予制度を適用するために必要な提出書類は?
納付の猶予制度の適用を受けるためには、通常、猶予の申請書のほか、「資産及び負債の状況を明らかにする書類」、「今後の収入及び支出を明らかにする書類」、「個別の事情が確認できる書類(納税の猶予の場合)」などを提出することとなっておりますが、新型コロナウイルス関連の猶予申請については、新型コロナとの因果関係の証明など細かい手続きは求めないこととされていることから簡素化されることが予想されます。
従来の制度で活用できるものは?
また、従来からある制度で、新型コロナウイルスに関連する例はあまりないとは思われますが、所得税及び復興特別所得税の予定納税や法人税・地方法人税・消費税の中間申告分は、災害等により財産に相当の損失を受けたときには、申請により、確定申告書の提出期限まで納税の猶予を受けることが可能です。
他に、所得税については、財産に相当の損失を受けていなくても、所得額が減少している場合には、6月30日の現況によって、その年の所得金額と税額を見積もり、第1期、第2期分の予定納税額を減額できる制度があります。
また、消費税についても中間申告制度があり、仮決算に基づいて申告・納付する方法が選択でき、やはり、前年度より業績が悪ければ納付税額は減少します。
地方税についてはお住まいの地域によって対応が異なりますが、国税同様に地方税の減免や納税猶予が行われると予想されます。
減免が予想されるのは、新型コロナウイルスの予防のために商品等を消毒し、販売不能となったため所得等の20%を超える損害が生じたことによる個人事業税の減免ですが、減免申請を行わなければ対象とならないので注意が必要です。
また、納税猶予については原則1年以内の都民税の納税猶予制度があり、国税に準じた取り扱い、手続きになると考えられます。
先の見えない新型コロナウイルスの感染拡大を楽観することはできません。
融資制度同様納税についても早め早めの対策が重要です。