グローバル化に伴って、海外に駐在する方や海外で起業する方などが増えていますが、そういった方々が「非居住者」に該当する場合は、税務上の取り扱いが変わってきます。今回は非居住者の確定申告や納税管理人について解説します。
そもそも非居住者とは?
非居住者とは、国内に住所を有しない者、又は引き続き1年以上国内に居所を有しない者をいいます。
非居住者については、原則として国内源泉所得についてのみ所得税が課税されます。
国内源泉所得とは、国内で行う事業、国内にある不動産等の貸付や譲渡による所得、国内での人的役務の提供による対価等をいいます。
国内源泉所得とは?
非居住者の国内源泉所得については、源泉徴収のみで課税関係が終了するものと、総合課税となるものがあります。
また、恒久的施設を有する者が恒久的施設帰属所得を得た場合には、すべての所得が総合課税となりますが、その他の場合で、事業所得を生じた場合には課税対象外となり、利子、配当、使用料等や給与その他人的役務の提供に対する報酬等の所得が生じた場合には、源泉分離課税となり、源泉徴収で課税関係が終了します。
恒久的施設とは?
恒久的施設とは、一般的に、「PE」(Permanent Establishment)と略称されており、次の3つの種類に区分されています。
- (1)支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫、鉱山・採石場等天然資源を採取する場所。ただし、資産を購入したり、保管したりする用途のみに使われる場所は含みません。
- (2)建設、据付け、組立て等の建設作業等のための役務の提供で、1年を超えて行うもの。
- (3)非居住者のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、常にその権限を行使する者や在庫商品を保有しその出入庫管理を代理で行う者、あるいは注文を受けるための代理人等(代理人等が、その事業に関わる業務を非居住者に対して独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合の代理人等を除非居住者の確定申告と納税管理人きます)。
恒久的施設を有するか、どう判定する?
日本国内に恒久的施設を有するかどうかを判定するに当たっては、形式的に行うのではなく機能的な側面を重視して判定することになります。例えば、事業活動の拠点となっているホテルの一室は、恒久的施設に該当しますが、単なる製品の貯蔵庫は恒久的施設に該当しないことになります。
総合課税となる所得の割合と青色申告特別控除
総合課税となる所得の場合には、申告が必要となり、源泉徴収の上で総合課税となるものについては、還付の可能性もあります。
総合課税となって確定申告をする際には、非居住者の申告における所得控除は雑損控除 (国内にある資産に限る) 、寄付金控除、基礎控除のみとなりますが、青色申告承認申請書を提出すれば、青色申告特別控除を受けることも可能です。
非居住者が国内の土地を譲渡した場合
非居住者が、国内にある土地等を譲渡した場合の譲渡所得は、総合課税の対象となっておりますが、租税特別措置法により、申告分離課税となり、譲渡対価については10.21%の源泉徴収がなされたのち、長期譲渡該当分は15.315%、短期譲渡該当分は、30.63%の税率が適用されます。
非居住者へ出国後に給与等を支払う場合
また、非居住者となった役員や使用人に出国後に支払う給与等については、同じ海外勤務者に支払う給与等であっても取り扱いが異なり、役員報酬については、国内源泉所得として扱われ、20.42%の税率で源泉徴収が必要ですが、使用人の海外における勤務に対する給与等は、国内源泉所得に該当しないことから源泉徴収の必要はありません。
非居住者と確定申告
非居住者の所得のうち、日本国内で発生した一定の所得については、引き続き日本の所得税が課税されます。
例えば、国内にある貸家の賃貸料などの不動産所得が一定額以上あれば、毎年確定申告書を提出しなければなりません。
このような場合には、非居住者の確定申告書の提出や税金の納付等、納税義務を果たすために納税管理人を定める必要があります。
納税管理人はどんな人がなれる?
納税管理人を定めたときには、その非居住者の納税地を所轄する税務署長に「所得税の納税管理人の届出書」を提出する必要があります。この届出書を提出した以後、税務署が発送する書類は、納税管理人あてに送付されますが、確定申告書は非居住者の納税地を所轄する税務署長に対して提出します。
納税管理人は日本に住所があれば、個人だけでなく法人もなることができます。また、有償でも無償でも構いません。通常は親族や顧問税理士にお願いされる方が多いです。
納税管理人の業務とは?
納税管理人の具体的な業務は、次の2つです。
- (1)非居住者の確定申告書を提出し、税金を納付すること(還付の場合は還付金を受け取ること)
- (2)税務署から送付される書類を受け取ること
1年以上の予定で日本を離れ、海外勤務する人は、出国の翌日から日本の非居住者に該当するため、出国までに年末調整を行う必要があります。
しかし、納税管理人の届け出をした場合には、その年の1月1日から海外勤務者として赴任する日までの間に生じた給与所得その他居住者として総合課税を受けるすべての所得の金額と、海外勤務者として赴任した日からその年の12月31日までの間に生じた次に掲げるような所得とを合計し、海外勤務者として赴任した年の翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告をすればよいこととなります。
また、確定申告義務のある方は、出国までの間に納税管理人を決めて届け出をしなければ、出国までに確定申告をしなければならず、それ以降に申告した場合には延滞税等かかる可能性がありますのでお気を付けください。