外為法(外国為替及び外国貿易法)は、対外取引の基本法で、規制対象を主に企業や個人による海外の企業や個人との資本取引、決済等とし、例えば、①海外に預金口座を開設し、その口座を通じて海外での取引の決済を行ったり、通信販売の代金を払ったりすること、②海外との資金の貸付け・借入、③居住者間の外貨建て取引(企業間でのドル建て決済等)等としています。
外国投資家によるM&Aや投資においては外為法上の規制を留意し、日本企業が営む事業の内容によって、事前に事業所管省庁への届出を行い、待機期間を満了してからでないと取引を実行することができない場合があります。
ここにおける外国投資家とは、非居住者である個人の外国人投資家等や外国法人等で人的・資本的関係で判定を行います。
M&A及び投資においては、上場・非上場会社等の株式・議決権の取得、日本国内法人等からの事業の譲受け、吸収分割及び合併による事業の承継等が外為法上の対日本国内直接投資等に該当することとなります。
外為法上、外国人投資家が対日本国内直接投資を行う場合に事前届出が必要なのは、具体的には指定業種告示(対内直投)別表によりますが、別表一では、武器、航空機、人工衛星等、別表二では、農林水産業、石油精製業、ソフトウエア業等です。
外国投資家がこのような業種に対日本国内直接投資等を行おうとするときには、原則的に、その取引または行為の類型に応じて、その取引または行為を行おうとする日の前6カ月以内に事前届出を提出する必要があります。
これは、財務大臣及び事業所管大臣が、その事前届出に係る対日本国内直接投資等について日本国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、または公衆の安全の保護に支障を来すことになるおそれまたは日本経済の円滑な運営に著しい悪影響を及ぼすことになるおそれの有無等を審査すると判断した場合、その取引または行為の禁止期間が最長で届出受理日から5ヵ月間まで延長されることがあるからです。
ただし、実務上、対日本国内直接投資の禁止期間は届出が受理された日から30日間であり、届出内容に照らし特に審査をする必要があると判断された場合を除き、その禁止期間は2週間に短縮されるものとされており、さらに、4営業日に短縮される可能性もあるものとされています。
しかし、その短縮は常に保証されているわけではございませんので、遅くとも30日前までに届出を行うことが望ましいといえます。
また、事前届出には免除される場合があり、指定業種のうちの武器、宇宙関連やサイバーセキュリティ関連など国の安全を損なうおそれが大きい業種はコア業種として免除を利用することができませんが、それ以外の業種については、免除を利用することができない行為類型に該当せず、免除基準を遵守する限り事前届出が免除されます。
※ コア業種とは・・・武器、航空機、宇宙関連、原子力関連、軍事転用可能な汎用品の全てとサイバーセキュリティ関連、医療関連、電力業、ガス業、通信業、上下水道業、鉄道業、石油業の一部
しかし、非上場会社の株式または持分の取得について事前届出免除制度の適用を受けた場合には、その対日本国内直接投資等の実行の都度事後報告が必要となります。
この事後報告手続きとは、その対日本国内直接投資等を行った日から45日以内に、事後報告書を作成し、日本銀行経由で財務大臣及び各事業所管大臣に提出する必要があります。
※ 事後報告を要する対日本国内直接投資等とは、指定業種告示(対内直投)別表第三に掲げる業種のみを営む会社を対象とした対日本国内直接投資等を指し、具体的には建築工事業、製鋼業、医療用機械器具・医療用品製造業、光学機械器具・レンズ製造業、電子デバイス製造業、電子部品製造業、出版業、広告制作業、一般乗用旅客自動車運送業、一般貨物自動車運送業、各種卸売、小売業(石油・鉱物、燃料に係る卸売、小売業を除く。)貸金業、クレジットカード業、割賦金融業、金融商品取引業、生命保険業、損害保険業、不動産代理・仲介業、経営コンサルタント業、純粋持株会社、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、医療・福祉、産業廃棄物処理業等が含まれます。
また、事後報告書を法定の期限内に提出できなかったまたは提出しなければならないにもかかわらず提出していないことが事後的に判明した場合、財務省その他の事業所管省庁に連絡の上、速やかに事後報告書の「その他の事項」欄に、法定の期限内に提出できなかった理由及びその旨を付記した上で提出します。
このようにクロスボーダーM&Aは外為法上の規制を留意して行う必要があります。
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