高騰を続ける不動産価格、どうなる売却時の税金
都心や主要都市ではマンション価格が高騰しています。
以前は不動産の譲渡による税金は、人生に何度もあることではないこと、売却による支払原資があること、譲渡費用が限られること、3,000万円の特例を使えば税金がかからないことなどから節税など検討する必要がないと考えていらっしゃる方がほとんどでしたが、昨今の不動産価格の高騰により、日に日にその必要性が高まってきているといえるでしょう。
税率に影響する所有期間
まず考慮に入れておかなければならないのは、その所有期間です。
所有期間が短期(所得税30.63%、住民税9%)か長期(所得税15.315%、住民税5%)かで税率が大きく異なります。
物件の所有者は投資用不動産のときにはどんな場合でも、居住用財産の3,000万円控除を使える場合には控除をしても所得が発生しそうな場合には、今物件を譲渡したら短期譲渡に該当するのか長期譲渡に該当するのかを常に念頭に入れておく必要があります。
逆に投資用物件の場合であれば、短期で売買する可能性が高ければ法人での購入を検討する必要があるといえます。
余談ですが、新築物件の売主に法人が多いのはこういった理由もあります。さらには、大規模物件の場合、短期譲渡から、長期譲渡になったタイミングで売り物件が増えることも、もっと言うと値段が下がることも考えられます。(税率が下がるため、手取りが増え、急いで売りたい方は値を下げてでも売りに出すことがあるため)
所有期間の計算方法
話が逸れてしまいましたが、短期譲渡か長期譲渡かの判断で気を付けなければならないのが所有期間の計算方法です。
当然、長期としたいので長い方がいいという前提ですが、取得日は、一般的には契約日又は引き渡しを受けた日ですが、新築で未完成の物件の場合にはどうなるのでしょうか。
一般的に大規模物件の場合には、契約・竣工・引渡しには、数カ月かかる場合もありますので、契約後竣工したのであれば竣工日、竣工後契約したのであれば引渡し前の契約日とするのが有利ということになります。
次に譲渡日ですが、短期譲渡は取得の日以後5年以内にされたもの、長期譲渡は取得の日以後5年超にされたものとされていますが、この5年は譲渡した年の1月1日で判断することとされています。
さらに注意すべきは、譲渡日は、契約日又は引渡日とされていることから、引渡日より後に契約するということはあまりないでしょうから引渡日とすべきということになります。
ですから、極端に言えば、年末に契約し、年始に引渡しとすることにより19.315%もの税率が変わるということもあり得るということです。
不動産会社の立場で言えば、大規模物件の竣工後5年を経過した日の属する年の翌年1月1日以降に売却の提案をするのが良いといえるかもしれません。
譲渡所得の計算方法
次に譲渡所得の計算です。
譲渡所得の計算の際に基本となるのは
譲渡収入-(取得費+譲渡費用)
ですので、取得費や譲渡費用が多いほど譲渡所得が低くなるということになります。
ここで取得費とは
取得費=(取得に要した金額+設備費+改良費)-減価の額
ですが、取得に要した金額には、登録免許税(登録に要する費用を含む。)、不動産取得税等固定資産の取得に伴い納付することとなった租税公課をその固定資産の取得費に算入することができますので漏れがないように注意しましょう。
さらに取得後設備の購入がなかったか、リフォームをしたかなどを確認することが必要です。
次にこの計算における減価の額ですが、これは取得費からマイナスされる金額ですから、少ない方がいい数字です。
減価の額は、
取得に要した金額+設備費+改良費×0.9×同種の減価償却資産の耐用年数に1.5を乗じて計算した年数に対応する旧定額法の償却率×経過年数
により算出されます。
ここにおける償却率は、鉄筋コンクリートで住宅用の耐用年数は47年ですからこれに1.5を乗ずると70.5年となり、ここにおける1.5を乗じて計算した年数の1年未満の端数は切捨てられることとなっていますので、70年となり、これに対応する償却率は0.015(小数点未満4位切上げ)となります。
経過年数の計算においては6月以上の端数は1年として、6月未満の端数は切捨てられることとなっておりますので、ギリギリの場合は売るタイミングを早めにした方が良いこともあり得ます。
先ほど申し上げたように、新築のマンションの場合、長期譲渡に該当するか短期譲渡に該当するかの判断は、竣工日前に契約していれば、竣工日を取得日として計算するのが有利ですが、ここにおける減価の額を計算する際には引渡日を起算日とするのが有利ということになります。
かなり細かな論点となってしまいましたが、不動産の売買は多額な取引となりますので念頭に入れていただくとよろしいかと思います。
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