土地建物を一括譲渡、どうなる消費税?
土地建物を一括で譲渡した場合の課税資産の譲渡等の対価の額(建物の額)について、売買契約書において区分されていても合理的に区分されていないとしてその按分を否認され追徴された事例で、東京高等裁判所は一審に続き控訴人の控訴を棄却しました(令和5年(行コ)第176号)。
今までの実務でいえば、契約書で区分されていて、それに従った処理を行えば問題ないとされてきましたが、そういった場合でもその合理性を検討する必要があるということになります。
ただ、消費税法においては、合理的な方法が規定されているわけではないので、今回の判決は特に不動産業者様には参考になると思います。
この会社のビジネスモデルは、マンションを含む中古住宅を会社が購入し、リフォームを施して販売するというものです。
税務当局の判断の背景は?
具体的には、税務当局にとって次の点において看過できないものであったと考えられます。
まず、販売の際の建物の価額ですが、この会社における過去に取扱った物件の建物の固定資産税評価額の割合の実績値をベースに決めていました。
これだと、過去のサンプル数や地域による違いなども考慮されておらず、合理的であると主張するのは難しいものと思われます。
また取引は、中古住宅を土地と建物を区分して購入し、建物分の消費税を仮払消費税として払っているわけですから、その売却時の建物価格が購入時の価格より低いということは納付する仮受消費税の方が少ないということですから、その取引だけを抜き出すと利益の出ている取引にもかかわらず消費税は還付となり、さらに、購入した物件にリフォームを施して、それを考慮しない価額で建物として売却しているわけですから、さらにリフォームの際に支払った消費税も還付されるということになります。
また、従来契約書上で区分していれば問題ないとされたのは、販売側の課税売上と購入側の課税仕入れが同一であれば、国としては消費税の税収に影響がないという側面もあったのでしょう。
しかし、この事例の場合には、購入時も、売却時も取引の相手側が一般消費者であるため、一般消費者にとっては取引の総額が同じであれば消費税額がいくらであって変わりはないという側面があるため、契約書があるのだから双方の合意があったと主張しても当事者が消費税計算においてトレードオフ関係にはないのですから消費税額の合意形成に問題が生じないのは当然であるといえるでしょう。
土地建物を一括譲渡する際の注意点
本件のような独自の方法で建物価額を計算している会社はそう多くはないでしょうが、同じビジネスモデルの会社は多いですから、今後は、同じようなビジネスモデルであればリフォーム価格は建物価額に上乗せすべきといった考え方が一般的になる可能性もあります。
本件は現時点(2024年6月5日)では最高裁への上告は行われていないようですが、上告の可能性もございますので、上記内容は現時点での弊所見解となります。
BPS国際税理士法人では税に関する相談を承っております。お問い合わせはこちらから。