近年非居住者や外国法人が日本の不動産を購入する事例が増えています。
そういった場合、個人で買うのがいいのか、法人で買うのがいいのかという質問を受けることが多いのですが、考えられる方法として「①非居住者が個人として購入する。」「②非居住者が株主として日本に法人を設立しその法人で購入する。」「③外国法人が法人として直接購入する。」「④外国法人が子会社として日本法人を設立しその法人が購入する。」などのパターンが考えられます。
ではそれぞれの特徴を税務上の観点から検討してみます。
1.個人として日本の不動産を購入する場合
非居住者が個人として日本の不動産を購入し賃貸した場合には、日本で確定申告をする必要があります。逆に賃借している方は、家賃の支払いの際に20.42%の源泉徴収をしてから家賃の支払いをしなければなりません。
ただし、土地、家屋等を自己又はその親族の居住の用に供するために借受けた個人が支払う家賃の場合には源泉徴収の必要はありません。
また、非居住者が日本国内にある不動産を売却した場合、その非居住者は課税所得が生じた場合には日本で申告義務が生じ、その不動産の取得者は譲渡対価の10.21%の源泉徴収をしてから譲渡対価を支払い、源泉徴収した金額を納税しなければなりません。
ただし、その不動産の譲渡対価が1億円以下でありかつその不動産の購入者が個人であり自己又はその親族の居住の用に供するために購入したものであれば、源泉徴収をする必要はありません。
2.日本で設立した法人が日本の不動産を購入する場合
次に非居住者が株主として日本に法人を設立しその法人で購入する場合ですが、これだと純粋な日本法人ですから、税制は一般的な日本人が株主である会社と何ら変わりはなく、利益がでれば、法人税や法人に課される地方税等を納税することとなります。
また、この会社の株式を売却した場合ですが、この株式が不動産化体株式(※1)に該当すれば、租税条約にもよりますが多くの場合その非居住者が国内に恒久的施設を有していない場合でも源泉地国課税となり所得が生ずれば日本で申告義務が生じます。
ただし、この場合に取得者に源泉徴収義務が生ずることはありません。
※1 不動産化体株式とは法人の発行する株式で、その株式の譲渡の日から起算して365日前の日から、その譲渡の直前の時までの間のいずれかの時において、その法人が有する資産価額の総額のうち、国内にある不動産の価額等が占める割合が50%以上である法人の発行する株式のことです。
3.外国法人が直接日本の不動産を購入する場合
次に外国法人が直接日本の不動産を購入した場合ですが、この場合、家賃収入や不動産売却によって生じた利益には法人税がかかります。ただし、一般的に法人の利益に課される地方税(国税の地方法人税は除く)はかかりません。
またこの場合の消費税ですが、その外国法人の資本金や事業年度、基準期間があるか、またある場合の課税売上高がいくらかなどにもよりますので注意が必要です。
4.外国法人が日本に設立した子会社が日本の不動産を購入する場合
次に外国法人が子会社として日本法人を設立しその法人が不動産を購入する場合ですが、この不動産保有法人は内国法人ですので、運営上の税制は通常の法人と同様です。
ただし、この法人の株式を売却した場合でこの法人の株式が不動産化体株式(※1)に該当していれば、その取引は源泉地国課税となり、その外国法人においては日本で法人税の申告義務が生ずることとなります。また、その際に取得する法人における源泉徴収義務は生じません。
5.贈与が発生する場合は注意が必要
ここで検討すべきは、日本国内に直接不動産を有する外国法人の株式及び日本国内に不動産を有する日本法人の株式を有する外国法人の株式を贈与した場合です。
例えば、「国内住所も日本国籍も保有していない個人」から、「国内住所も日本国籍も保有していない個人」が贈与で財産を取得する場合には、「非居住制限納税義務者」に該当するため、その贈与する財産が株式の場合には、その株式の発行法人の本店所在地が国外であれば国外財産となるため課税対象になりません。
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