経営通信

相続時精算課税制度の活用について

令和6年より、相続時精算課税制度が多くの方にメリットがあるものに改正されましたが、その割に利用者が増えていません。

これは恐らく、この制度が複雑であり、わずかではありますがデメリットとなる場合もあること、相続税及び贈与税についての理解が必要であること、先行き不透明な経済状況下において未来予測が必要であることなどが原因と考えられます。

また、制度を既に使っている方についてそのメリットを最大限に享受しているかどうかについても疑問が残るところです。

ではこの制度のメリットについて順を追ってご説明させていただきます。

相続時精算課税制度活用のメリット

相続税がかからない場合でも贈与税が軽減

まず、相続税がかかる見込みがない方で、贈与がしたい方はこれを活用すべきです。

親の財産がそれほど多くない方(3,000万円+600万円×法定相続人の数以下)であっても、通常の贈与を受けた場合にはその額により累進的に比較的高率な贈与税を支払う必要が生じます。

しかし、相続時精算課税制度を使えば、2,500万円までであれば納税は生じません。

また、相続時精算課税制度の最大の特徴である、相続税申告時の相続財産への加算ですが、そもそも相続税が生じないわけですから、加算しても相続税が生じないということになります。

ですから、子や孫に贈与をしようと思われた時には、まずは、全財産のたな卸しを行い、相続の際の財産総額が基礎控除額以下であり、通常の贈与で税額が生ずるようであれば相続時精算課税制度を活用すべきです。

次に財産のたな卸しの結果により相続税が生ずる方で、投資用不動産をお持ちの方は相続時精算課税制度を検討すべきです。

そういった方は、持分の一部でもよいのでその不動産を精算課税により贈与します。

収益が生じている不動産等の一部を贈与するわけですから、贈与後の収益の一部は精算課税を受けた子や孫の収益となり、親等と比較すると所得税率が低いと考えられますので、家族としての手残りが増えるとともに、親の財産の増加が抑制され、結果的に相続税の増額も抑制されるといった効果が贈与してから相続が発生するまで延々と続くこととなります。

不動産の一部贈与は、測量や分筆等コストのかからない持分贈与が有利な場合が多いです。

節税効果の大きい自社株の贈与

また、将来価格が上がる可能性が高い資産について早めにこの制度を使うことには大きなメリットがあります。

そういうと将来的に必ず価格が上がるものなんてあるわけないでしょとおっしゃる方が多いとは思いますが、その見極めが最も容易な代表例が自社株です。

自社株の相続で苦しんだ経験のある老舗企業などでは、後継者が幼少期の頃から、徐々に自社株を贈与されているといった方がほとんどですが、急成長企業では対策する暇もなく株価が高騰していることが良くあります。

堅実な経営をしていると株価は確実に上がりますし、インフレ下においては様々なモノの値段が上がるのと同様に株価も上がる可能性が高いでしょう。

そこでなるべく早い段階で精算課税により贈与します。

業績に多少ばらつきがある場合には、株価が低い時(あるいは意識的に低くして)に精算課税により贈与し、その後は精算課税の基礎控除の範囲内でゆっくり贈与していくといった方法も有効です。

株の贈与の有利性はその異動コストの安さです。不動産であれば、登録免許税や司法書士報酬、取得税などがかかりますが、非上場株式の贈与は、株主総会や取締役会の決議を行えばほとんどコストはかかりません。

また細分化されていますので、金額調整が容易で、仮に一株の金額が高すぎても分割により単価を下げることも容易です。

ただ、注意すべきは、その金額の算出です。非上場株の算出は、財産評価基本通達によりますが、会社の規模等によって算出方法が異なり、その規模の判定によっては大きく価額が異なる場合もありますので、業績の変動により来期は規模判定が変わるといった時には、規模判定が変わってから精算課税贈与を行うといった方法も考えられます。

精算課税適用後の基礎控除制度

令和6年の改正により、さらに精算課税の有用性が増したのは、精算課税適用後の基礎控除制度です。

改正前までは、一度精算課税を適用するとその後は暦年課税の基礎控除110万円を使うことができなくなり、贈与を行うと2,500万円まででも申告が義務化されるとともに、それを超えると一律20%課税されていたのですが、改正後は、年間110万円までの贈与であれば精算課税における基礎控除とされ、申告義務もなく、それを超えた分だけ精算課税として申告義務が生ずることとなりました。

また精算課税後の基礎控除の範囲内であれば、相続発生前の7年間の贈与について、相続税計算の対象とする必要もないこととされました。

同時に他の方からの贈与については暦年課税の対象とすることもできます。

まとめ

このように相続時精算課税制度は使い方によっては驚くほど相続税額を減らすことができる場合もあるのですが、意外に活用されていません。

相続税対策は被相続人の死を連想させることからなかなか取り掛かりづらいといえますが、祖父母や両親にとっては相続時精算課税制度を利用して生前に家族の笑顔が見られることが望外の喜びとなるかもしれません。

財産のたな卸し、非上場株式の評価、相続時精算課税制度についてご興味のある方はこちらのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

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