経営通信

YouTuberの海外移住にかかる税務

YouTubeチャンネルが収益化すると税金が高いなと考え、海外移住を検討するのは無理のないことかもしれません。

ましてやその撮影・編集を低税率国で行うことができるのであれば尚更です。

ではそういった方のために、そのような場合の課税関係について検討してみましょう。

まず、個人として活動を開始していた場合、累進課税による税負担が重く感じられ、チャンネルを法人に移して税金を安く抑えようと考えるかもしれません。

この場合、チャンネルを個人から法人に移すわけですから、個人としては適正価格で譲渡したものとして所得税の確定申告をする必要が生じます。

ここにおける適正価格の算出は難しいと考えられると思いますが、将来に見込まれる収益からDCF法(※)や財産評価基本通達に準ずる方法、あるいはそれら様々なアプローチを複合して導き出す方法等を用いることなどが検討に値するでしょう。

また、設立した法人のアカウントとなり、収益化が進んできて、さらに節税しようと海外に移住し、非居住者になってしまおうと考えるかもしれません。

その際には、アカウントが日本法人のままであれば、当然に日本で課税され、一般的な法人と同様に法人税等がかかります。一方で、非居住者の代表者に役員報酬を払う際には20.42%の所得税を源泉徴収して日本で納税しますが、役員報酬が高額であれば所得税の20.42%は低税率とも言えますし、日本での住民税もかかりませんので、節税になったといえる方もいらっしゃるでしょう。ただし、居住地の税法も考慮に入れなければなりません。

さらに、海外で会社を設立し、日本法人の所有するアカウントを移転させることも考えられます。

この場合には、収益化しているアカウントを個人から法人へ移転するときと同様に、その権利の適正な時価を算出し、日本法人が海外法人に譲渡したものとして日本法人に法人税等が課税されます。

この場合の適正な時価もやはり、DCF法(※)等で算出することになるでしょう。

この譲渡益は、退職金などを損金とすることである程度は減少させることができますが、もちろん日本で退職金の所得税は課税されますし、仮に既に海外移住をしてから支払ったとしても、その年の1月1日時点で日本に住所があった場合には住民税も源泉徴収(特別徴収)して支払わなければなりません。

また、この譲渡益は営業権等に類似した権利の譲渡であるため、消費税の課税対象となります。

さて、海外で法人を設立し、その法人のアカウントで収入を得れば、その海外で法人税を払えばいいわけですが、若干注意しなければならないのは、YouTubeで収益化している場合、居住国にかかわらず「米国税務情報(W-8BENなど)」の提出が求められるという点です。

これを提出しなければ、全世界での収益全体に対して24%がアメリカの税金として自動的に天引きされます。

ただし、これを提出すればアメリカ在住の視聴者から発生した収益にのみ米国の源泉税が適用されます。

これは収益化しているYouTuberすべてに適用されていますので、すでにご存じの方がほとんどだとは思いますが。

補足:チャンネルの適正価格を計算する「DCF法」とは?

本文中で、YouTubeチャンネルを個人から法人へ、あるいは日本法人から海外法人へ移転・譲渡する際に「DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法)」を用いて適正な時価を算出する、と触れました。ここでは、その仕組みを簡単に解説します。

1. なぜ「適正な価格(時価)」での評価が必要なのか?

自分が育てたYouTubeチャンネルを自分の法人に移す場合、「自分の会社だから1円で売却しよう」と考えるかもしれません。しかし、税務上は「第三者に売却したとしたら、本来いくらの価値があるのか(適正な時価)」で取引をしなければならないというルールがあります。

もし時価よりも低い価格で譲渡すると、税務調査で「適正価格との差額」に対して追徴課税がなされるリスクがあるため、適正な価値算定が不可欠です。

2. DCF法(Discounted Cash Flow法)の仕組み

YouTubeチャンネルやWEBサイトのように、形はないものの将来にわたって収益を生み出す資産(無形資産・営業権)の価値を評価する際に、実務で最もよく使われる手法が「DCF法」です。

簡単に言うと、「そのチャンネルが将来生み出すであろう『利益の合計』を予測し、それを『現在の価値』に割り戻して計算する方法」です。

ステップ①:将来の稼ぎを予測する

登録者数の伸び率、過去の再生数や広告単価、企業案件の傾向などを元に、「今後数年でこれくらいの利益を生むだろう」というキャッシュフローを予測します。

ステップ②:「現在の価値」に割り戻す(ディスカウントする)

「将来もらえる100万円」は、確実性やインフレ、規約変更のリスクなどを考慮すると、「現在の100万円」と同じ価値ではありません。そこで、将来の不確実性(リスク)や時間的な価値を考慮した「割引率」を使って、現在の価値に計算し直します。

※YouTubeの場合、アカウント停止リスクやトレンド変化が速いため、一般的な不動産や伝統的な事業よりも「リスク(割引率)」を高く設定するのが一般的です。

YouTubeチャンネルの価値算定は非常に専門性が高く、将来キャッシュフローをどう予測するか、割引率を何%にするかによって評価額が大きく変わります。

「適正な価格で譲渡し、税務署にもしっかり説明できる根拠を残す」ためにも、法人成りや海外移転の際は、YouTubeやWEBビジネスの税務に詳しい税理士や公認会計士に相談・算定を依頼することをおすすめします。

YouTuberの税に関するご相談はBPS国際税理士法人までお気軽にどうぞ。

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